2分モデルを改良する
所得階層が二極化するという前提にたって、モデルを改良します。
日銀の景気短観でもそうですが、今までは、景気を全体で見るという視点が強かったとおもいます。
これは、景気は循環するという考え方で、開発経済のトリクルダウン戦略とも対応します。
トリクルダウン戦略とは、豊なひとが更に豊かになれば、その波及効果で、豊かでない人も次第に豊かになるという戦略です。つまり、お金持ちが豊かになれば、貧乏人もそのおこぼれにあずかって、貧困から抜け出せると考えます。
しかし、二極化社会では、トリクルダウンはおこりません。
次に、社会全体を分解して考えます。
今まで、高成長社会と、低成長社会で考えてきましたので、以下では、「社会」を分解して、「グループ」に分けて考えます。
図1で説明します。
State Iは近代以前の農業社会です。これが、工業すると、労働生産性の高い工業部門が出てきます。これが、Stage IIです。Stage IIでは、農業などの労働生産性の低い部門も依然としてのこっています。
Stage IIIはより工業化が進んだ段階です。Stare IIからStage IIIでは、農業から工業への労働者の移動(世代交代も含む)がおこり、社会全体の労働生産性があがって、多くの人が豊かになります。Stage IIの低成長Gから、高成長Gへの青い矢印は労働者の移動を示します。同時期に、工業(高成長G)から農業(低成長G)への矢印も、組み合わせとして示していますが、矢印を点線にしたように、このケースはほとんどありません。しいて言えば、サラリーマンを辞めて帰農する場合です。Stage IIIでは、社会全体の所得が向上しますので、弱所産業(低成長G)の農業に対する所得補正が政治的に認められます。
現在は、ポスト工業化社会のStage IVに入っています。
Stage IIIまでは、国際分業も垂直分業で単純で、移民もすくなかったので、図1は1つの国の中ので経済としてみることができます。
しかし、Stage IVでは、水平分業が広がっていること、日本を除けば、移民が無視できなくなっていることから、図1の枠組みで考えることには、無理があります。ですので、以下では、図1に表されている部分だけの変化を論ずることになります。
まず、図1の図形の大きさは労働者の数に比例していると考えます。
Stage IVでは、IT化により、高成長Gに属する人の数の減少が起こります。
高度成長Gの労働生産性は更に向上しますが、単純労働はロボットに置き換わり、高度成長Gから、低成長Gへの労働者の移動が起こります。
これが、現在起きていることと、かつ、今後も引き続き、起こることになります。
もちろん、共同体が重要であるとか、心情に訴える主張をする人はいますが、普通の人は、アーミッシュのような生活はできないので、そうした主張は、心の平静を得るための思考停止以外の効果はないと思われます。
多くの労働者は低成長Gにいるので、その人たちの満足を得る方法は、次の2つしかありません。
権力層は、後者を優先する場合が多いように思われます。
堀江 貴文さんは、「すべての教育は洗脳である」と主張していますが、後者の点で見れば、的を得ていると思います。
以上見てきたように、社会経済構造が、似てきているので、米国と中国は似てきています。
図1は簡略しすぎなので、少なくと、2国間モデルくらいまでは、バージョンアップしないと、見落としが多いと思われます。しかし、図1を書くだけでも、言葉でだけ考えているよりは、はるかに複雑な現象を検討することができます。
言い残したことを、次回以降、捕捉したいと思います。