日本のアフリカ化が始まった~コロナウィルスのデータサイエンス(73)

補正予算が動いています。

非常事態宣言の再発はほぼなくなりました。この点については、別途考えます。

経済学の基本テーマ

経済学の基本テーマは、第1に、資源を最適配分して、限られた資源をつかって最大限の豊かさを実現することです。これは、効率性の追求になります。

第2に、貧困の解消とそのための平等性の追求です。

この2つの目標はトレードオフになることが多いので、バランスのとり方が課題になります。

第2のテーマのバリエーションが、弱者救済であったり、中小企業救済になります。

アフリカ化の問題点

アフリカでは、今まで、貧困と飢餓の問題が頻繁に起こっています。

飢餓の問題は、食料の絶対量が不足して起こることはなく、アクセスの問題がより需要であるということがセンの実証研究でわかっています。これは、例えば、内戦がおこると、食料の配分が適切に行われなくなり、飢餓が発生するというような課題です。アフリカで飢餓になりますと、FAOが食料援助をします。これは、対処療法としてはやむを得ない面はあるのですが、援助がなければ膨大な利益が手にできた農業者の機会喪失にもつながります。つまり、食料を生産してお金を稼ぐよりも、食料援助に介入して、ピンハネした方が、はるかに容易にお金が稼げる状況を作り出す可能性があります。つまり、無償援助はモラルハザードを引き起こして、本来の産業の成長を阻害することがあります。

つまり、「効率性の追求」なき、「平等性の追求」には、モラルハザードによる大きな副作用があるのです。

筆者がここで、アフリカ化政策とは、企業に「本業で稼ぐより、補助金を当てさせる」産業政策のことです。

たとえば、シャープは経営に行き詰って、台湾企業の傘下に入りました。

シャープも、省エネルギー補助金をもらっていたことがあります。これは、政府から、企業へのお金の移転であって、産業政策としては、アフリカ化になります。補助金をもらって、会社の利益をうみだすことができると、補助金をもらうために活躍した人が出世して、会社の中枢部に入ります。そうなると、会社は、技術を開発したり、商品を売って利潤をえるより、補助金をもらうことに奔走するようになります。その結果、会社は変わることより、変わらずに補助金をもらうことが優先され、時代の変化に取り残されて、結局はつぶれてしまいます。この構造は、アフリカの産業がいつまでも自立できないことと同じです。

1990年のバブル以降、日本は失われた30年になって、労働生産性が上がらない国になりました。これは、従来の低労働生産性の企業経営をしていて、赤字になって倒産しそうであれば、補助金を受け取るという仕組みが定着したためです。その最大に受益者は、銀行でしたが、そのあと、弱電であったり、色々な業界が続ています。ここで、補助金をもらうためには、仕事のやり方を変えて、労働生産性をあげるわけにはいかないので、補助金が進歩を否定するというアフリカ化が生じています。

補正予算の課題

コロナウイルス対策の補正予算の経済政策は、9割以上がアフリカ化政策です。

日本がこれからも先進国として生き残るためには、労働生産性をあげる以外に、方法はありません。

これは第1には、「効率性の追求」です。

予算の補助金が、「効率性の追求」を目的としているか、「平等性の追求」を目的としているかは、比較的簡単に常識の範囲で分類することができます。

分類の結果は、90%以上が「平等性の追求」を目的としているはずです。

というのは、「効率性の追求」のための資金は、補助金以外で簡単に手に入れることができるからです。

「効率性の追求」では、競争相手の企業より、少しでも早く、少しでも労働生産性をあげることが、生き残りに必要になります。この時点で、補助金頼みの企業は淘汰されているのです。

結局、補正予算は典型的なアフリカ化政策によって、税金を使って、産業をつぶしているだけと思われます。