緊急事態宣言が解除されてので、これからの関心は次の点になります。
-
感染が再度広がるリスクはあるか
-
経済が持ち直すか
ここで、検討してきた点は、前者になります。
最初に結論をいいますと、わかりません。
ジョンホプキンス大学のデータを久しぶりに良く眺めてみました。注目は、最近、新規の感染者が少ないか、急激に減少している国です。
以下、
国名:感染者数:「5月1日ころの感染者数」から「最近1週間の感染者数」
でまとめています。数字は目視でおおよその検討です。
スイス:30476人:80人から15人
イスラエル:16734人:71人から20人
オーストリア:16539人:79から30人
ノルウェイ:8364人:57人から15人
韓国:11225人:35人から30人
ルクセンブルク:3993人:15人から10人
タイ:3042人:18人から3人
アイスランド:1804人:2人から1人
スロバキア:1511人:16人から5人
ニュージーランド:1504人:6人から1人
スロベニア:1469人:6人から1人
オーストラリア:7126人:30人から15人
最近では、スイスのように感染が広がった国でも、感染者数を抑えることに成功している国も出てきています。
一方では、ニュージーランドのように、感染が広がる前に抑えこむことに成功している国もあります。
以上のデータでは、共通項はわかりませんでした。
非常事態宣言のかけ方、解除の仕方、それに対する国民の反応がことなるので、複数の国の比較は困難です。
簡単に手に入り、国ごとの差がないデータはGoogleデータになります。しかし、データがそれしかないといことと、そのデータが原因を推定できるということは別問題です。特に、感染者数の比率の低い国では、行動制限が、感染拡大防止に結び付く確率は低いので、覚悟する必要があります。
感染確率
行動制限が、感染拡大防止に結び付く確率を整理しておきます。
おもな事故の確率は篠原拓也「できる人は統計思考で判断する」(三笠書房)によれば、30年で以下のようです。
【災害】 ・大雨で罹災する確率は0.50%、死傷する確率は0.002% ・台風で罹災する確率は0.48%、死傷する確率は0.007%
【事故】 ・火災で罹災する確率は1.9%、死傷する確率は0.24% ・交通事故で負傷する確率は24%、死亡する確率は0.20% ・航空機事故で死亡する確率は0.002%
【事件】 ・空き巣ねらいに遭う確率は3.4% ・ひったくりに遭う確率は1.2% ・すりに遭う確率は0.58% ・強盗に遭う確率は0.16% ・殺人事件の被害者となる確率は、0.03%
1)感染させる確率
非常事態宣言下では、行動制限を進めたいために、行動制限すれは感染が抑えられるという洗脳のメッセージが毎日ながされましたが、感染していない人が、行動制限しても、行動制限しなくとも、感染拡大には差はありません。
あなたが感染していれば、行動制限ではなく、自宅待機の手続きをしてください。
2)感染する確率
3か月間(91日=13週)に、感染している人に遭遇する確率を考えます。計算を簡単にするために出歩くことを制限して毎日1人に合うとします。現在の基準では、1週間10万人あたり0.5人です。この数字を使うと、あった1人が感染している確率は、0.5÷7÷10万になります。
3か月の確率は、0.5÷7÷10万×91になります。
次に、実際はありえませんが、比較のために30年確率を考えます。
これは、0.5÷7÷10万x365x30=0.1になります。
これは、交通事故の死亡率の半分です。条件をかえれば、10倍から100倍くらいまではありうる数字かもしれません。ただし、これは、交通事故の死亡率とコロナウィルスの感染率を比較しています。コロナウィルスの死亡率であれば、更に確率は低くなります。一方、交通事故が怖くて出歩かない人はいないので、経済学者はコロナ保険をかけて経済発動をするというのが、妥当な解決策であると考えていると思います。
このように、行動制限は、たまたま、感染している人にヒットしなくなれば、効果はあります。しかし、大阪府のように感染者の4割が院内感染である場合には、その確率は、さらに小さくなります。米国の場合には、老人介護施設の死亡率が際立って高く問題になっています。このように感染確率や死亡確率に偏りがある場合には、ハイリスクエリアに限定した対策が合理的です。
googleデータの注意
今後もデータがそれしかないのでGoogleデータ(行動制限)を見ますが、これが、感染拡大の大きさにつながる確率はあまり高くはありません。うまくいけば相関がある程度に理解しておくことが肝心とおもいます。
2こぶラクダ
感染がいったん抑えられたが、その後、再ブレークした場合には、新規の感染者数のグラフが2こぶラクダの形になります。北海道がその例です。
ジョンホプキンス大学のデータをざっと見てみると、イランだけが2こぶラクダの形をしています。つまり、今のところ、確実な再発が見られるのはイランだけです。ですから、感染の爆発的な再拡大は今までのデータからはないと思られます。ただし、今後のデータに注意が必要です。
ロックダウン無効論
以上は、非常事態宣言やロックダウンに効果があるという前提の検討です。
ニューズウィーク5月26日「ノーベル賞受賞者が異を唱える──政府は、疫学者の予測におびえて都市封鎖した」では、「ノーベル化学賞を受賞した生物物理学者マイケル・レヴィッド教授は、<実際の疫学を誤ってモデル化している>と英国での都市封鎖に異を唱えている」といっているそうです。ここでは、データから言えば、ロックダウンがなくとも、2週間程度で、爆発的な拡大は収まる傾向があるそうです。
このブログでも、SIRモデルは、現実を十分に説明できていない可能性が高いこと申しあげてきました。以下では、モデルの考えられる問題点を列記してみます。
-
移流と拡散:モデルの対象空間が均一であること、空間が独立していることが仮定にありますが、これには、強い違和感があります。クルーズ船を考えると、外部からウィルスが持ち込まれる(移流)がなければ、行動制限(拡散制御)の意味はありません。一方、いったんウイルスが持ち込まれると移流制御(外部との接触の遮断)は外部へのウイルスの蔓延防止には効果があるかもしれませんが、モデル対象のクルーズ船のウィルスの蔓延には関係しません。また、感染率があるレベルを超えると、行動制限(拡散制御)で、ウイルスの蔓延を制御することは困難です。これから、移流と拡散は区別すべきです。また、行動制限の効果は感染率の関数になっているはずです。しかし、これらは区別されていません。
-
ゆるいロックダウンと体温管理:スウェーデンと日本は緩いロックダウンをしています。他方、厳しいいロックダウンをした国もありますが、目に見える違いはありません。また、この2か国は、体温を指標に、ウイルス対策を選択しています。PCR検査先進国からは、健康保菌者の拡大を防止できないこの方式は合理的でないとの批判があります。しかし、100万年単位の進化生物学でみれば、医学や体温計のできる前から、人類は、体温や咳を指標に患者を隔離して、生存に成功してきました。ですので、犠牲者はある程度出ますが、存外、合理的な可能性もあると思われます。
-
歯磨きモデル:途上国の水道で、水を飲んでも安全という国は少なく、日本人は基本、ミネラルウォーターで生活します。このときに、歯磨きで口をゆすぐときにもミネラルウォーターを使うべきか否かという議論があります。標準的な答えは、体内に入る病原菌の数が少なければ、発病することはないので、水道水で歯磨きをしてよい。ただし、水は飲んではいけないというものです。コロナウィルスには、こうした閾値がないと仮定しているようですが、緩いロックダウンや体温管理が効果がある場合には、閾値があるとも考えられます。
-
ブドウモデル:空間分布が偏っているのに、一様空間を前提とするモデルには違和感があります。そこで、イメージしているモデルは、ブドウのようなモデルです。ブドウの1つの粒の中では、SIRモデル(拡散モデル)が成立します。しかし、他の粒に移動するには、リックする部分を通らない(移流)と拡大できないというモデルです。1つの粒の中で、ウイルスが蔓延するには2週間程度かかりますが、ここでいったん、爆発的なウィルスの拡大はとまって、次の粒に移動するまでの間は拡大速度が遅くなる(拡大が拡散から移流にシフトする)というモデルです。
結論の出せない課題なので、今日はここまでにします。
他にデータがないので、リスクを覚悟で、Googleデータを見るくらいしか、方策は思い浮かびません。