感染者数の推移
図1の東京都の感染者数の推移をみると、減少が明らかになってきています。
東京都の感染者の推移の今までの知見をまとめると、次のようになります。
なお、これは、全て曜日効果を消して、サンプルのばらつきの影響を避けるために、7日間の移動平均をとったデータで言えることです。
専門家会議は5月1日に実効再生数の推定値を出しています。これについては、既に、詳細な分析をしていますが、ここでは、要点だけを振り返ります。
5月1日の専門家会議の西浦モデルの分析からわかったことは次です。
東京都の西浦モデルは、感染者数のピークに合わせてチューニングしたとおもわれ、ピークはあっていますが、次の2点があっていません。
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ピークの日付が大きくずれている。西浦モデルの感染者数のピークは3月27日で、7日移動平均をとった実際のピークは4月11日です。16日のピークのずれがあります。
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ピークからの減少傾向を過大に推定している。
さて、実態と比べると推定された実効再生産数が、小さすぎる可能性がありますが、この点を無視して、とりあえず、専門家会議の推定値をチェックします。
図2が専門家会議が示した東京都の実効再生算数推定値です。これは、要約版資料から引用しています。
「0.5(4/10)」と赤い文字が入っていますが、これは、4月10日の実効再生算数の推定値が0.5であることを示しています。非常事態宣言が出たのが、4月7日、全国に広がったのは4月12日です。したがって、5月1日時点では、4月30日までの行動制限を考慮した実効再生産数を評価しなければなりません。図2でこれに一番近いデータは右端の4月13日(棒グラフがあるのは4月12日まで)の0.2です。その右は表示されていませんが、次のコメントがついています。
直近20日間は推定感染者数と実効再生産数を過小評価する可能性があるため、データを省略している。
つまり、実効再生算数の推定計算は4月30日まで計算した。その値は0.2より小さいと書かれています。感染者数が減少しているので、実効再生算数が増加することはありえません。
ゼロリスクをとることは、技術者倫理では禁じ手です。これを行うと、事故や災害がひどくなるからです。たとえば、製品強度にミスがあって、若干の不良品があった場合、リコールをしないと、不良品がなかったことするために情報の隠ぺいがおこります。でも、それは、問題となる原因を排除したわけではないので、より大きな問題を引き起こします。
東日本対震災の時の福島原発のメルトダウン問題を思い起こしてください。原発はゼロリスクであると主張したいが故に、メルトダウンが隠蔽され、事故や被害を拡大します。
日本の社会やマスコミはゼロリスクを強要するので、それが、逆に問題を大きくします。ゼロリクスでは、リスク情報が隠蔽されるので、第2の飯館村を作る可能性があります。
感染者のデータを公式にデジタルで公開しているのは、東京都など一部です。
行動制限のデータは、国内ではデジタルで公開されていません。筆者は、公開されているGoogle Reportのデータを使っていますが、専門家会議もマスコミもGoogle Reportのデータは、存在しないかのように無視しています。スマホのデータで、県境を越えて移動する人の数もわかるはずですが、公開されていません。すくなくとも、通勤圏が県境を越えていない地方では、この値を求めるのは容易なはずですが。
つまり、好きなように情報操作できるように、基本情報は既に隠蔽されているといえます。このあたりは、前回の戦争の時から進歩していません。マスコミは西浦モデルの結果がよめないか、読めても、空気を読んで大政翼賛会になっています。
感染者数をゼロにするという過剰な行動制限は、コロナ疲れを生じて、その結果、行動制限が効かなくなります。さらに、実体経済に大きなマイナスになります。繰り返し日になりますが、既に、コロナウィルスは世界中に広まってしまったので、出口は、ワクチンか集団免疫しかないと思われます。集団免疫が出口の場合には、感染者数があって免疫が広がるが、感染者数を医療崩壊が起こらないレベルに抑えることが目標ににあります。感染者数がゼロでは、免疫が獲得できないので、問題解決にはなりません。ワクチンができるまで、全ての経済活動を中止できませんので、当面の出口は、感染者数ゼロのゼロリスクではなく、許容できる範囲の感染者数のコントロールになるはずです。しかし、現在のように、毎日、感染者数が何人出たとマスコミが煽り立てて、コロナウィルスを視聴率を稼ぐ道具にしている場合には、選挙対策で、ゼロリスクを目指す政治家がいても不思議ではありません。しかし、繰り替えしますが、ゼロリスクの追及は、第2のメルトダウンにつながります。
北海道のコロナ疲れ
既に、コロナ疲れの傾向のある北海道のデータをここで、見ておきます。
図3は北海道の感染者数の推移です。
非常事態宣言は、2回行われています。
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2月28日から3月19日に北海道独自の第1回目の非常事態宣言を出しています。
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4月12日~第2回目の非常事態宣言に入っています。
図3では、非常事態宣言は、赤い箱で示しています。
青が7日移動平均の感染者数で左軸目盛です。日付は公開日です。
オレンジが、7日平均のGoogleデータのTansitを使った行動制限指標で、右軸目盛です。軸は、2週間ずらしてプロットしてあります。
今まで、話題になったことがないのが不思議ですが、第1回目の非常事態宣言のデータをみると、非常事態宣言の間に行動制限率は、徐々に増加していますが、最大でも35%には達していません。一方、行動制限率の変化と感染者数の変化には明確な対応がありません。感染者数の変化に影響するパラメータには、次の3つが考えられます。
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行動制限率
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域外との人の移動
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クラスターつぶしの効果
2.はデータがないので何とも言えませんが、行動制限に伴い減少すると考えることが自然でしょう。1.2.で感染者数の変化を説明できないのであれば、第1回目の非常事態宣言では、クラスターつぶしが最大の要因であったと思われます。
これに対して、第2回の非常事態宣言では、行動制限率が、35%を超えるあたりから、感染者数の減少が明確になってきています。この傾向は他の都道府県と同じで、ここでは、行動制限率が寄与していると思われます。
そして、この2回の非常事態宣言の間では、行動制限は徐々に弱まっています。4月7日に都市部で非常事態宣言が出されてもその傾向に変化はみられません。
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2回の非常事態宣言の間では行動制限が次第に弱まっている
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第2回目の非常事態制限の行動制限率が、都市部と比べると小さい
これらは、コロナ疲れを示している可能性があります。行動制限率が低くなるのは、人口密度が低い場合には、当然な部分もありますが。
最後にまとめておきますが、感染者数を支配する要因には、少なくとも上記の3種類があります。
また、ここで見たように、行動制限率80%の必要性はデータからは導き出せません。
なぜならば、行動制限率80%が正しければ、北海道の第1回目の非常事態宣言は終結できなかったはずだからです。
経済的なダメージを考えれば、行動制限より、ITを使ったクラスターつぶしの方が効果がある可能性を北海道の第1回目の非常事態宣言のデータは示しています。これは、私権の制限にはなりますが、戦時体制下であると考えれば、公共の福祉のために私権が制限されるのは正当化できると思います。
おことわり:
感染の日付については、次があります。
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公表日
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陽性判定日
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推定感染日
ジャッグジャパン株式会社様より、東京都は3月27日公表分より陽性判明日等の個別報告がなくなり、公開日だけになったということを教えていただきました。ありがとうございました。
ですから、東京都の場合には、3月26日までのデータとは不連続な可能性がありますが、大勢には影響はないと思います。
現在は個人で作業していますので、3種類のデータを識別するだけの余力はないので、扱っているデータは基本は公開日になっていると考えています。本来は、陽性日や推定感染日を使うべきですが、この属性は一部のデータにしか付与されていません。ですので、現時点では、あきらめています。2週間のずれは、本来は陽性日にすべきですが、これはできていません。ですので、ラグは更に大きく取るべきかもしれませんが、今のところ他に方法がないの手を抜いています。
全部あればよかったのですが、なぜか一部だけです。
厚生労働省は、陽性日と推定感染日のデータを持っているはずだと思うのですが、公開するつもりはなさそうです。
https://raw.githubusercontent.com/beoutbreakprepared/nCoV2019/master/latest_data/latestdata.csv
Google Report
https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: <2020.05.08>.