行動分析データの課題~コロナウィルスのデータサイエンス(その40)

非常事態宣の延長と根拠

4月30日ころから非常事態宣言を延長する方向で検討に入ったようですが、行動制限の効果が感染者数に出るには2週間かかるので、連休中の行動制限の効果は、判断が難しいです。

連休前の行動制限の効果を見て判断するのであれば、連休前に結論が出せるので、連休中に判断するということは、連休初期の行動制限の実績もみて判断するということであると解釈します。

非常事態宣言を延長するか否かは、社会的、経済的な影響が非常に大きな意思決定なので、後世のその判断の適否を評価してもらうために、根拠となるデータを示すべきです。

しかしながら、スマホの空間情報解析データは、毎日の速報値が提示されるだけで、時系列データはデジタルにひょおうじされていません。

つまり、データサイエンスから見れば、この国は、民主主義国家での、先進国でもないことになります。

Google Reportはcsvでも提供されていて、有用ですが、タイムラグが大きい問題がありますので、スマホのデータに頼らざるをえません。

色々検索した結果、過去にさかのぼって数字が取れるのは、

次の内閣官房のページだけでした。

https://corona.go.jp/

ここでは、毎日、

  1. 全国主要繁華街エリアにおける人流の動向(4月21日から)

  2. 緊急事態宣言前後における13都道府県の人口変動分析(4月18日から)

  3. 駅の改札通過人数の推移(対前年比)(4月7日から)

  4. 全国の高速道路の主な区間の交通量増減(対前年比)

のデータがPDFで開示されています。

3は、1枚のPDFに過去のデータが載っていますが、1.2.4.は毎日のPDFを順番に読んでいくと、時系列データを作成する必要があります。交通量は、物流もあるので、接触データとしては使いにくいとおもうので、ここでは無視します。あお、pdfには文字コードは埋め込まれておらず、単なる画像データです。

とりあえず、1、2のデータを作成しました。数字は、ベースと比べた減少率のパーセントで、全てマイナスなのでマイナスは省略しました。ブランクはデータがない場合です。

2.では、東京は、新宿と渋谷だけで、しかも、公開されている場所が入れ替わっています。公開されている観測点が入れ替わっているところが他にもあります。

5月1日に、Google Reportが更新されたので、これも分析中です。

 

 表1 全国主要繁華街エリアにおける人流の動向

地域 都道府県 エリア 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
北海道 北海道 すすきの駅 46.3 51.5 54 76.1 60.3 74.1 56.5 58 73.3 58.9
北海道 北海道 大通駅 43.4 45.9 47.9 74.4 66.3 75.1 49.9 52.5 73.9 54.5
東北 青森県 中央弘前駅       58.3 5.7 13.6 21.3 25.1 21.9 11.4
東北 宮城県 勾当台公園 30.9 37.7 33.2 66.1 46.7 53.7 30.2 39.4 51.9 39.4
関東 栃木県 東部宇都宮駅                 55.3 23
関東 群馬県 中央前橋駅                 30.1 33.2
関東 東京都 渋谷駅 70.1 71.6 69.9 85.9 78.9 86 71 70.2 83.4 70.8
関東 東京都 渋谷センター街 79.1 80.5 79.2 91.2 84.4 91.1 85.5 82.4 89.1 78
関東 東京都 原宿 70.4 68.5 72.5 87 80 84.3 71.8 72.5 81.5 73.6
関東 東京都 新宿歌舞伎町駅 72.9 66.4 62.4 83.2 78.3 79.7 64.3 64.6 75.9 65
関東 東京都 池袋駅 63.1 61.3 61.6 81.8 77.2 80.1 62 61 76.9 61.9
関東 東京都 東京駅 74.5 75.7 76.9 88 81.1 87.2 76.5 75.4 85.7 75.7
関東 東京都 新橋駅 74.3 76.3 74.7 88.1 70.6 74.3 74.6 74 68.5 76.2
関東 東京都 品川駅 76 77.7 77.5 89.9 76 79.2 79.3 76.8 77.5 78.5
関東 東京都 上野駅 65.5 61.3 66.7 83.2 79.5 83.7 67.6 70.3 80 68.9
関東 東京都 銀座駅 77.3 78.2 77.1 88.2 84.1 88.1 75.6 76.6 85 75.8
関東 東京都 六本木駅 67.7 68.5 63.9 83.2 65 65.5 66 63.9 64.6 67.8
関東 東京都 吉祥寺駅 49.6 49 50 71.2 65.8 70.6 46.8 47.6 68.2 50.7
関東 神奈川県 元町・中華街駅 32.7 23.4 34.9 68.7 48 47.4 38.7 45.7 52.3 31.2
関東 神奈川県 桜木町駅 42.4 34.8 36.7 72.7 57 63.2 44.6 40.7 58.1 47.7
関東 神奈川県 関内駅       68.4 33.6 34.8 31.5 34.7 37.3 32.9
東海 静岡県 浜松駅                 68.4 53.2
東海 愛知県 栄駅 62 63 62 81.6 78.9 86.1 62.2 62.3 78.3 64.4
東海 愛知県 伏見駅 52 47.2 50 75.4 48.9 73.2 46.5 47 45.6 54.8
近畿 京都府 河原町駅 66.2 68.6 71 86.2 77.1 79.4 63.5 69.8 79 64.1
近畿 大阪府 心斎橋駅 58.1 58.3 55.4 78.8 70.5 77 52.7 55.1 73 55.9
近畿 大阪府 なんば駅 66.3 68.1 67 83.2 80.2 82.5 67.1 66 80.5 67.4
近畿 大阪府 北新地駅 70.8 71 69.3 85.7 77.7 84.8 70.4 69.5 81.7 71.4
中国 岡山県 田町駅                 48.3 33.9
中国 広島県 八丁堀駅       78.4 65.9 74 56 58.2 72.1 56.4
四国 香川県 瓦町駅       69.2 43.5 50.3 33.1 40.1 49.8 39.8
九州 福岡県 博多駅 63.9 65.2 64 82.1 77.8 81 62.4 64.6 75.7 66.1
九州 福岡園 中洲川駅 51.1 51.8 55.5 79.3 59.5 63.5 49.6 48.2 59.2 55.5
九州 長崎県 観光通り駅       65.8 48 52.2 26.8 29.3 46.2 35.5
沖縄県 沖縄県 牧志駅 28.8 15.8 21 67.3 37.6 43.6 11.7 15 38.7 14.6

 

表2 緊急事態宣言前後における13都道府県の人口変動分析

date Sapporo Mito Omiya Chiba Shinjuku Shibuya Yokohama Kawasaki Funabashi Kanazawa Gifu Nagoya Kyoto Umeda Naniwa Sannomiya Tenjin
2020/4/8     47.6 40.5   56.8 54.1 37.6 39.7         59.1 54.6 38.7 34.6
2020/4/9     50.5 47.4   58.9 57.1 43.1 42.7         63.9 57.2 41.6 45.4
2020/4/10     49.2 46.3   58.9 55 40.6 40.4         63.7 54.4 39.4 44.5
2020/4/11     65.9 62.3   73.4 71.8 60.6 50.8         79.6 68.6 58.8 68.5
2020/4/12     72.1 68.8   75.6 77.2 65.2 57.6         83.8 73.5 66.9 75.6
2020/4/13     56.3 55.6   65.2 62.5 49.6 50.5         67.7 61 47.6 51.3
2020/4/14   34.4 54.1 53.5   63.6 62.2 48.6 45.5       52.1 70.5 61.7 47.6 52.6
2020/4/15 17.6 31.8 56 53.7 66.3 64.9 63.8 48.1 43.4 51.9 37.6 57.2 53.2 70.8 61.7 50.6 53.3
2020/4/16 19.5 26.8 57.2 55.6 68.1 65.1 64.7 49.7 45.6 54.6 37.3 58.6 54.4 71.6 62.9 50.4 55
2020/4/17 19.9 29.6 54.7 54 67.8 64.3 63 46.6 43.1 56.8 38.9 59.5 54 70.9 60.3 49.3 55.4
2020/4/18 55.7 53 72.9 71.8 80.2 77.8 77.5 68.1 58.6 69.4 49.2 73 70.3 84.1 70.8 66.3 72.1
2020/4/19 68.8 55.9 72.8 71.5 79.9 77.6 77 65.9 56.5 73.4 55.9 77.6 72.2 86.9 74.1 71.7 77.7
2020/4/20 45.2 42.2 59.2 58.3 69.2 67.2 66.2 53.1 49.3 60.4 43.5 62.9 61.8 73.1 62.7 53 56.2
2020/4/21 49.3 45.2 59.3 57.5 69.7   64.7     60.3 43.3 63.7 67.3 74.7   53.8 57.9
2020/4/22 52.2 44.4 60.8 56.6 69.3   66.1     63.4 40.9 64.1 63.6 74.5   54 59.1
2020/4/23 52.2 40.6 58.8 57.5 69.7   66.1     62.6 47.7 64.1 67.3 74.5   53.9 58.5
2020/4/24 51.0 41.9 57.7 56.3 68.3   63.6     63.8 40.9 63.2 64.6 72.9   50.7 56.2
2020/4/25 68.1 53.2 69.9 66.7 78.9   75.2     71.8 51.5 74.2 73.1 84.9   67.4 73.2
2020/4/26 73.6 60.2 74.8 73.4 81.9   78.9     74.8 56 80.9 76.7 87.8   72.6 78.3
2020/4/27 53.1 46.1 61.8 56.8 70.2   65.6     63.2 45.9 62.9 67 73.1   52.7 57.5
2020/4/28 55.7 46 61.5 56.6 70.8   65.3     61.6 44.4 64.5 67.1 74.1   52.9 58.9
2020/4/29 71.5 57.5 74 70.2 81.7   78.2     74.9 57.3 77.6 77.8 87.6   70.5 76.9

 

 

最近の東京都のデータの傾向

東京都の5月1日までのデータを更新しました。

図1にGoogle Reportの活動制限と感染者数をピークの4月11日以降プロットしました。共にma7をかけたデータです。概ね、線形にのっていると思われます。下に凸で、-50%以下になると変化が、加速するとも見えます。

ただし、5月1日のデータで、ぶり返して、その傾向は見えにくくなりました。

 

f:id:computer_philosopher:20200501191232p:plain

図1 行動制限率と感染者数

 

図2は、ma7をかけた、感染者数とGoogleの活動制限率です。活動制限率はtransit_stations_percent_change_from_baseline

をつかい、日付は2週間ずらしてあります。5月1日のレポートで、4月18日から、26日のデータが追加されました。これで、トレンド見ることができる日は、26+14-3=4月37日=5月7日までになります。

今回のデータは、今まで増加してきた行動制限率の変化が止まってしまったということです。

4月30日と5月1日の間では、ma7の感染者数の低減が止まっています。

感染者数の変動が、行動制限の変化率で説明できるのであれば、今後のトレンドは赤い点線になります。

行動制限率が変化しなくとも、既にー60%を低い水準にあるので、これをキープすれば、感染者数が更に減っていく可能性もあります。これが、水色の点線です。変化率ではなく、水準が効くという考え方です。4月11日以降のデータには、同じ行動制限率のデータはないので、データから、この2つを識別することはできません。2,3日経過を追跡する必要があります。

 

 

f:id:computer_philosopher:20200501191303p:plain

図2 東京都の感染者数の推移