日本のパンデミック予測~コロナウィルスのデータサイエンス(その21)

日本のパンデミック予測

今回は3月30日までの日別感染者数データの日本と米国を比較してみます。

いくつかのサイトでは、感染モデルの説明がありますが、今回の最大の課題は、中国での感染時点から問題になっているモデルの係数のとり方になります。

そこで、日本で問題になっているのは、PCR検査数の少なさです。

日本は、発熱などの疑われる症状があった場合に、PCR検査をする方針をとっています。

この方式の特性は次にまとめられます。

  • PCRで陽性になっても、治療薬はないので、陽性になった患者の治療面では、このガイドラインと、PCR検査を多くするガイドラインに差はない。

  • 健康保菌者がウィルスを拡散させることを防ぐことを目的とするのであれば、このガイドラインよりも、PCR検査数を多くするガイドラインのほうが優れている。

  • 医療機関のキャパシティとPCR検査数を論ずる人がいますが、医療機関のキャパシティが重要なファクターであることあh、既に、武漢で分かっているわけですから、キャパシティをどうして増やすかが議論の対象であって、現状のキャパシティに合わた検査数にすべきであるという論理はなりたちません。

問題は、健康保菌者が活動することで、感染経路が不明の感染が増えることです。

経路が特定できない感染は、正確には、全感染数から、経路のわかった感染数を引いて求めます。

これは、患者数が増えると、時間がかかって難しくなります。

逆に、考えると簡便法としては、1日当たりの感染者数がある水準を超えると、感染経路不明による感染が広がり、感染者数が対数的に増加すると思われます。

図1は3月21日から30日までの東京都の感染者数(横軸)と経路不明感染者数(縦軸)です。

今のところはかろうじて線形関係にあるように見えます。

 

 

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図1

 

 

 

図2は、日本と米国の日別感染者数を対数でプロットしたものです。

オレンジの丸の米国をみると、次のことがわかります。

3月1日すぎに、日別感染者数が急増している。

2月の感染者数は、月末まで、ゼロ(グラフ上は欠測)か1であったが、2月末に増えている。

これは、2月中にウィルスが広がらなかったのではなく、PCR検査数が少なかったためと思われます。

少ないPCR検査数を理論的に補完する方法はありませんが、トレンドとしては、外包に近い緑線に近かったと考えるのが妥当ではないでしょうか。2月中は緑線の上にあり、3月になって、オレンジの線に移行したと思われます。

青丸の日本のデータについても、緑線は外包にあたる位置にあります。

1日当たりの感染者数があるレベルを超えると、感染経路不明の感染者による感染者数の急増が始まります。

米国の場合には、これは、3月1日ころ、感染者数100人弱でおこりました。3月2日には、ワシントン州の施設で集団感染が始まっていますので、この解釈は、感染事例の事実に対応しています。

日本の場合には、3月29日に千葉県の施設で集団発生が認められています。感染時期は、1週間以上前なので、これが、米国での集団感染に対応した事例であると解釈すれば、4月以降の感染者数のトレンドは、赤線になります。この解釈では、アウトブレークは既に始まっているということになります。

  

 

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図2